第2回
一条真也
「人間関係は礼に始まり、礼に終わる」

 

 朝起きたら「おはようございます」と言っていますか。食事の前には「いただきます」と言っていますか。家庭で、学校で、職場で、きちんと礼をしていますか。
 すべての人間関係の基本は「礼」にあります。なぜ人間は礼をするのでしょうか。多くの首相を指導した安岡正篤は、「本当の人間尊重は礼をすることだ。お互いに礼をする、すべてはそこから始まらなければならない」と言いました。「経営の神様」といわれた松下幸之助も、何よりも礼を重んじました。彼は、世界中すべての国民や民族が言葉は違うがみな同じように礼を言い、あいさつすることを人間としての自然の姿、すなわち「人の道」であるとしました。
 その「礼」を軽視する人がいます。あいさつもしなければ感謝もしない。礼は「人の道」、いわば「人間の証明」であるにもかかわらず、お礼は言いたくない、あいさつはしたくないという人がいるのです。礼とは好みの問題ではなく、人間であれば必ずしなければならないものです。というより自分が人間かどうかを表明する、きわめて重要な行為なのです。よく武道の世界では「礼に始まり、礼に終わる」と言われます。人間関係もまた、礼に始まり、礼に終わることを知りましょう。