第3回
一条真也
「ハーレムの真実」
先日、九州を代表する経営者の方々と一緒に、ドバイとイスタンブールに行ってきました。神田うの夫妻のハネムーン先で知られるドバイでは、地上800メートル、160階建てという建設中のドバイ・タワーと物価の高さに仰天。こんなバブリーな街はどうも信用できません。「ドバイは、ヤバイ」という親父ギャグを放ちながら、砂漠の上の摩天楼を後に、イスタンブールに向かいました。
やはり歴史の重みがあり、文化の香りゆたかなイスタンブールは、わたしのハートにヒットしました。かのオスマン・トルコ帝国の首都であったところです。
そこで、ハーレムの跡を訪れました。ハーレムというと、日本人はすぐ次のような連想をします。魅力あふれる美女たちが艶やかな色香を競い、日夜、酒池肉林の歓楽が催される禁断の館...。しかし、本当は「奥さんの部屋」という意味なのです。王侯貴族の場合は夫人が複数の付き人の女性とともに暮らす館ですね。
イスタンブールのハーレムは、オスマン帝国の国王夫妻の相手をするために、トルコをはじめとした近隣諸国から集められた美女たちが暮らしていた場所でした。わたしは、そこに学校が併設されていたことに、非常に興味を持ちました。何でも美女たちは、ここでトルコ語をはじめ、歴史、文学、芸術などを幅広く学び、ゆたかな教養を身につけたそうです。
そして、王は教養ゆたかで話題豊富な女性を特に好んだとか。日本人が想像するような性的なサービスよりも、王の話し相手としての側面が強かったといいます。そういえば、かの『アラビアンナイト』で、残虐な王の夜の相手をつとめたシェへラザードも、さまざまな話を千夜にわたって王に披露して命が助かったことを思い出しました。「芸は身を助く」という言葉がありますが、女性にとって、もっとも自分を助けてくれるものは、美貌やフェロモンよりも教養なのですね。