第4回
一条真也
「老いの神話を知っていますか?」

 

 いわゆる「老いの神話」というものが世間にあります。高齢者を肉体的にも精神的にも衰退し、ただ死を待つだけの存在とみなすことです。この神話は、次のようなネガティブなイメージに満ちています。すなわち、老人とは「孤独」「無力」「依存的」「外見に魅力がない」「頭の回りが鈍い」など。しかし、物事というのは何でも見方を変えるだけで、ポジティブなイメージに読み替えることが可能なのです。
 たとえば、高齢者は孤独なのではなく、「毅然としている」のだ。無力なのではなく、「おだやか」なのだ。依存的なのではなく、「親しみやすい」のだ。外見に魅力がないのではなく、「内面が深い」のだ。そして、頭の回りが鈍いのではなく、「思慮深い」のだ、といったふうにです。
 神道では、「老い」を神に近づく状態としてとらえ、その最短距離にいる人間を「翁」と呼びます。人から翁へ、翁から神へ、これこそ真の「老いの神話」であると私は考えています。