第3回
一条真也
「奉仕という仕事」

 

 介護業とは奉仕の仕事です。奉仕やボランティアという行為をプロフェッショナル化した仕事と言ってもよいでしょう。
 では、奉仕とは何でしょうか。それは、決して誰かが自分を犠牲にして、他の誰かのために尽くすということではありません。真の奉仕とは、自分自身を大切にし、その上で他人のことも大切にしてあげたくなるといったものです。自分が愛や幸福感にあふれていたら、自然にそれを他人にも注ぎかけたくなる。
 「情けは人の為ならず」と言いますが、他人のためになることが自分のためにもなっているというのは、世界最大の公然の秘密の一つです。アメリカの思想家エマソンによれば、「心から他人を助けようとすれば、自分自身を助けることにもなっているというのは、この人生における見事な補償作用である」というわけです。
 与えるのがうれしくて他人を助ける人にとって、その真の報酬とは喜びに他なりません。他人に何かを与えて、自分が損をしたような気がする人は、まず自分自身に愛を与えていない人でしょう。つねに自分に与えて、なおあり余るものを他人に与える。そして無条件に自分に与えていれば、いつだってそれはあり余るものなのです。
 真の奉仕とは、助ける人、助けられる人が一つになるといいます。どちらも対等です。相手に助けさせてあげることで、自分も助けている。相手を助けることで、自分自身を助けることになっている。まさにこれは、与えること、受けることの両方が理想的な輪のかたちになっているのです。その輪の中で、どちらが与え、どちらが受け取っているのか、わからなくなる。それは、もう一つの流れなのです。
 いじめ、虐待、自殺、殺人、テロ、戦争...人心が荒れてゆく一方のこの社会において、直接の人的サービスを提供できる仕事の価値はますます高くなっていきます。その中でも、真の奉仕をめざす介護業が最高の仕事であることは言うまでもありません。介護業こそ、最も「生きがい」「働きがい」のある仕事ではないでしょうか。