第1回
一条真也
「すべては、思いやりから」
介護に必要なもの、それは「思いやり」に尽きます。
「思いやり」を提供する仕事に携わる人は、これからの社会の主役です。
現代は高度情報社会と言われています。昨年逝去した世界最高の経営学者ピーター・ドラッカーは、早くから社会の「情報化」を唱え、後のIT革命を予言していました。ITとは、インフォメーション・テクノロジーの略です。ITで重要なのは、I(情報)であって、T(技術)ではありません。
その情報にしても、技術、つまりコンピューターから出てくるものは、過去のものにすぎません。ドラッカーは、IT革命の本当の主役はまだ現れていないと言いました。では、本当の主役、本当の情報とは何でしょうか。
情報の「情」とは、読んで字のごとく感情や情操の「情」、つまり心の働きに他なりません。本来の情報とは、心の働きを相手に報ずることなのです。私は、次なる社会は「心の社会」だと確信していますが、それはポスト情報社会などではなく、新しい、かつ真の情報社会だと言えるでしょう。
そして、情報の「情」、心の働きを代表するものこそ、「思いやり」であると私は思います。「思いやり」こそは、人間として生きるうえで一番大切なものだと多くの人々が語っています。ダライ・ラマ十四世も、あのマザー・テレサも、「思いやり」が一番大切と語りました。仏教の「慈悲」、キリスト教の「愛」、儒教の「仁」にギリシャ哲学の「アガペ」まで含めて、すべての人類を幸福にするための思想における最大公約数とは、おそらく「思いやり」の一語に集約されるでしょう。
「思いやり」が形になったものが、礼であり、ホスピタリティです。私はホテル業や冠婚葬祭業といったホスピタリティ事業を営んでいく中で、自らの経験から学んだ「思いやり」を形にするヒントや具体的なスキルを、これから皆様に紹介していきたいと思います。