満月の下で、ブッダ・孔子・ソクラテス・イエスの「四大聖人」が並び立っています。
以前、日本画の大家・中村不折が「三聖図」として、釈迦・孔子・キリストを描いたことがありますが、ソクラテスを加えた「四大聖人」が一堂に会した絵は、おそらく世界でも初めてのはずです。「信長の野望」「三国志」などで有名なカリスマ画家の長野剛画伯に描いていただきました。
私は、ずっとこの「四大聖人」のセレクトは誰がしたのかが気になっていました。そして、「四大聖人」なるものを考案したのは日本人に違いないとにらんでいました。なぜなら、西洋思想を基礎づけるソクラテスとイエスの二人のみならず、東洋からブッダと孔子の二人を選んでいる点、しかも仏教と儒教の創始者を選んでいるところに日本人の匂いを強く感じたからです。人選のバランス感覚が、実に日本人らしいと思ったのです。
英文で書かれた日本人の名著として名高い新渡戸稲造の『武士道』(1899)、岡倉天心の『東洋の理想』(1903)、内村鑑三の『代表的日本人』(1907)にいずれも四大聖人が登場していることから、明治時代の日本において「四大聖人」というアイデアは誕生したのだと思われます。おそらく、あらゆる教えや思想を「いいとこどり」するという心学的な発想から、洋の東西、宗教、哲学を問わず、広く人類史全体から四人が選ばれたのでしょう。彼らは、いずれも「人類を幸福にしたい」という思いを強く持っていた点において共通していました。いわば、「世界平和」のシンボルです。
もうひとつ、「世界平和」のシンボルがあります。月です。
月は地球上どこからでも、日本からでも、中国からでも、アメリカからでも見上げることができます。その月は、古代より世界各地で「あの世」に見立てられてきました。月光のやわらかな光は「慈悲」や「仁」や「愛」を連想させ、月の満ち欠けは「法則」という概念を生みました。つまり月は、宗教や哲学の発生そのものにも深く関わっているのです。
一つの月の下に一つの地球。
月は、いつでも地球人類を天上から見守っています。
満月の下にたたずむ四人の人類の教師たち。
足元にたなびく雲は、やわらかな紫色をしています。
この絵が、世界の平和と人類の幸福に役立つことを願ってやみません。
一条真也
なお、「四大聖人」について、さらに詳しく知りたい方は、以下の書籍をお読み下さい。
『世界をつくった八大聖人』一条真也著(PHP新書)
『世界の「聖人」「魔人」がよくわかる本』一条真也監修(PHP文庫)
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